2月11日、網張スキー学校のバックカントリースキーツアーに参加し、源太ヶ岳に登った。
夏場は、松川温泉から三ツ石方面を経由する一周コースで何度も登っている。
6月末まで残雪が残り、頂上まで行けず引き返したこともある。
大深山荘も近いことから、是非とも冬季のログが欲しかった。
バックカントリーでは有名なコースである。
が、東斜面は表層雪崩の多発地帯として知られている。
雪崩による死亡事故は、同斜面で2002年1月13日1人が、2008年3月8日には2人が亡くなっている。
当日は午前8時半、松川温泉駐車場を出発し林道(奥産道)に沿って進行し、
9時20分、沢がある場所から山側に入った。
出発時は小雪交じりで風もあったが、次第に雪、風も収まりコンデションは良好だった。
11時20分、樹林帯を抜けると展望が開けると共に、前方に巨大な雪の壁が立ち塞がっていた。
壁の中には、所々に引きちぎられた笹が埋もれており、まさに巨大なデブリであった。
雪崩のデブリについては遠くから見たことがあるが、
このような壁を間近でみると、その力を思い知らされた。
同所から東側斜面に、先行者のトレースがあり頂上付近には姿も見えた。
ガイドから、先行者の行程は細心の注意と覚悟が必要であること、
危険を回避するためは北側を回り込むコースが適していると聞かされた。
稜線で風が更に強くなってきたため頂上は諦めて
12時少し前に滑降を開始した。
樹林帯は木々の間隔が狭くなく、雪質は上々で存分にツリーランを楽しめた。
そして12時55分あっという間に林道に降り、13時10分には駐車場に帰り着いた。
ガイドからは、
・沢を間違えると林道に出る際かなり苦労すること
・下倉スキー場からも登れるが、アップダウンが激しいこと
・源太ヶ岳から大深山荘まで迷いやすいこと
などを教えられた。
大深山荘までは行かれなかったが、少しは、滑りも上達したように感じたツアーだった。
※参考資料(PDF)
2002年1月13日発生源太ヶ岳雪崩事故報告書(源太ヶ岳雪崩事故対策委員会)
2008年3月8日発生源太が岳の雪崩調査
2002年1月13日発生源太ヶ岳雪崩事故報告書には、反省点を真摯に綴った内容が記されている。
その率直な自己反省に、深く感銘を受けた。
同書は、本件事故の反省を「雪崩に関する認識の欠如に尽きる」と語っている。
雪崩の発生メカニズム、天候との関係、弱層テスト、セルフレスキューのいずれに関しても無知であったと。
同源太ヶ岳に、一年に4~5回、10年登っていても、自然現象を捉えるには無に等しい経験だったと。
教訓として、当事者の証言、写真、気象データを解析した上で、雪崩の発生原因を推定し予知の可能性まで言及している。
本件事故の山岳部は、何年にもわたり冬山に挑戦し、多くの成功と教訓を得てきたはずである。
それにもかかわらず、今回の雪崩に関しては無知であったことを認め、深い反省を表明している。
この姿勢は、私たちが自身の経験や知識を過信することなく、常に学び続けることの重要性を教えてくれる。
登山は自然との対話であり、経験を積むことで安全性を高めることができるはずである。
しかし、この報告書を通じて、どれほど経験を積んだベテランであっても、自然の脅威に対する謙虚さと学び続ける姿勢が不可欠であることを再認識させられた。
自然の中で活動する全ての人々にとって、この報告書は大切な教訓を含んでいる。
経験に基づく自信は必要であるが、それが過信にならないよう常に自己を省みることが大切であること。
謙虚さを持ち続け、新たな知識を積極的に取り入れることで、安全性を高めることを。
今回の事故で命を落とされた方のご冥福を心よりお祈りするとともに、この悲劇から得られた教訓が、今後の登山活動において多くの命を守ることにつながるものと思う。